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あの夏の思い出
今、僕の目の前には長い一本道が続いている。



その横を毎日忙しく人々を運ぶために同じ道を行ったり来たりするやつがいる。



そう、電車だ。


今日僕は敷かれたレールを走るあいつに勝負を挑むことになった。


距離は200m。


遮断機の音が鳴り始めたら、それがスタートの合図だ。




ガチャ



ペダルに足をかける。

次第に心臓の鼓動が高なる。



固唾を飲んで見守る友人たち。


沈黙が続く。



なぜこうなったんだろう…




理由なんてない。

強いて言うならば自分達の限界にチャレンジすることだった。

御殿場線
国府津行き
2両編成(短い)
いつもは憧れているあの高速で移動する鉄の塊にどこまで抵抗できるのか…ただそれだけだった。



カーンカーンカーン

けたたましく鳴り響く音と同時に、その全てを遮る腕がゆっくりと降りて来る。


少し遅れたが、僕は全体重を右足に込めてペダルを踏み続けた。

次第にスピードが上がる。

速度と比例してギアが重くなる。


息が切れる。

苦しい。


でも、今はそんなこと考えていられない。


後ろを振り向く。

オレンジの車体がみるみる近づいて来る。


嫌だ、負けたくない。


気持ちに反して足の回転は徐々に落ちていく。



ゴールまであと50m。


僕は渾身の力を足に込めてペダルを踏み込んだ。


下を向く。


スピードが上がる。



その時だった。

一瞬体が浮いた気がした。
僕は風になったんだ。

行ける、このままどこまでだって。

そう思った時、目の前が真っ暗になった。
なにが起きたのかわからない。

ぐちゃぐちゃ

軟らかい感触を確かめつつ、冷静に考えてみよう。

まず僕は自転車に乗っていない。


そして、体が濡れている。





ゆっくりと体を起こす。



その時、僕は全てを悟った。



田んぼに落ちた。

そう、田んぼに落下したのだ。


スピードを出し、前を向かずにひたすら漕ぎ続けた結果だ。


前方不注意だ。






そんな小学4年生の夏の思い出があることでお馴染みの羽田でした311968160693.jpg
カテゴリ:羽田貴紀先生 | 02:52 | - | - | - | - |